物語を魅力的に展開し、読者を惹きつけるには、効果的なストーリー構成が重要です。
その中でも、「7ポイントストーリーストラクチャー」は、物語を7つの主要な要素に分けることで、明確な流れを作り出す手法として注目されています。
本稿では、7ポイントストーリーストラクチャーの概要を詳しく解説し、その構成要素や具体例を分析します。
さらに、この手法を活用した環境問題をテーマにしたプロットの構成例を提案し、物語をより深みのあるものにするためのポイントについても掘り下げます。
加えて、この構造がどのように多様なジャンルに応用できるかについても詳しく考察し、より実践的な活用方法を紹介します。
7ポイントストーリーストラクチャーとは

7ポイントストーリーストラクチャーは、Dan Wells によって体系化されたストーリー構成法です。もともとはテーブルトークRPGのナレーション手法を基に発展し、小説や映画などの物語創作にも応用されています。
構成要素
- フック: 物語の導入部分。読者の興味を引き、主人公や舞台を紹介する。物語のテーマや主人公の内面的な葛藤もここで示唆されると、読者の関心をより引きやすい。
- プロットターン1: 物語の方向性を決定づける転換点。主人公が新たな状況に巻き込まれ、元の生活に戻れなくなるような出来事が発生する。物語の進行を促す目的意識が形成される。
- ピンチポイント1: 物語の敵対者や障害が明確になり、緊張感を高める。敵対者の動機や強大さが描写されることで、主人公の課題が浮き彫りになる。
- ミッドポイント: 主人公が受動的な立場から能動的に行動を起こす。これまでの試練を経て、目的がより明確になり、成長が感じられる瞬間である。この時点で物語の中心テーマがはっきりとする。
- ピンチポイント2: さらなる困難が訪れ、絶望的な状況に直面する。主人公が精神的にも肉体的にも最大の試練に直面する場面であり、物語のクライマックスに向けた緊張感を生む。
- プロットターン2: 逆転の可能性が見え始め、主人公が勝利の糸口を掴む。ここでは、過去の伏線や学びが活かされ、主人公が成長した姿を読者に見せる重要な場面となる。
- 解決: クライマックスに至り、物語が完結する。主人公が最終的な対立を乗り越え、目的を果たす。読者に余韻を残す結末や、物語のテーマに沿った感動的な締めくくりが求められる。
この手法は、物語の結末から逆算して構築できる点が特徴で、一貫性のあるストーリー作りに適しています。
また、ミッドポイントを中心に対称的な構造を持つため、物語全体のバランスが整いやすくなります。これにより、読者はストーリーの進行を自然に受け入れることができるのです。
特に、長編小説やシリーズものにおいては、この構造が物語を整理しやすくし、全体の統一感を生み出します。
7ポイントストーリーストラクチャーの実例

この構成法がどのように活用されているかを、具体的な作品を基に見ていきましょう。
鬼滅の刃
- フック: 竈門炭治郎は家族と平和に暮らしていたが、鬼に襲われ家族を失う。さらに、妹・禰豆子が鬼に変えられてしまい、炭治郎は絶望に直面する。
- プロットターン1: 禰豆子を人間に戻す手がかりを求めて旅立つ。途中、鬼殺隊と出会い、鬼と戦う術を学ぶことを決意する。
- ピンチポイント1: 鬼殺隊の試験を受けるが、過酷な環境と強敵に苦戦する。同期たちとの絆も生まれ、成長への第一歩を踏み出す。
- ミッドポイント: 十二鬼月の強大な力と、鬼舞辻無惨の存在を知り、彼を倒さなければ禰豆子を救えないことを悟る。自分の使命を再認識する。
- ピンチポイント2: 上弦の鬼との戦いで、仲間が窮地に陥る。炭治郎も重傷を負い、戦う意志が揺らぐが、仲間の支えで再び立ち上がる。
- プロットターン2: ヒノカミ神楽の真の力を覚醒させ、新たな戦闘技術を身につける。過去の経験が全てつながり、戦士としての覚悟を決める。
- 解決: 鬼舞辻無惨との最終決戦に挑む。命を賭けた激闘の末、彼を討ち滅ぼし、禰豆子も人間へと戻る。長い戦いに終止符が打たれる。
転生したらスライムだった件
- フック: 普通のサラリーマン三上悟が通り魔に襲われ、気がつくと異世界でスライムに転生していた。異世界での新しい生き方を模索し始める。
- プロットターン1: 竜ヴェルドラと出会い、彼と友となることで強大な力を得る。「リムル」と名乗り、新たな人生をスタートさせる。
- ピンチポイント1: 他の種族との争いに巻き込まれ、モンスター国家を築こうとするも、思うように進まない。人間との対立も激化する。
- ミッドポイント: 魔王達の存在を知り、世界のバランスが脅かされていることに気づく。自国を守るために、より強くなる決意を固める。
- ピンチポイント2: 強大な敵によって仲間が捕まり、リムルは絶体絶命の状況に陥る。かつてない困難に直面し、打開策を模索する。
- プロットターン2: ついに自ら魔王へと進化し、圧倒的な力を手に入れる。これまでの戦いの中で培った知識と戦略を駆使し、強敵に立ち向かう。
- 解決: 魔王達の陰謀を阻止し、新たな秩序を築く。リムルは自身の国を守りながら、さらなる脅威に備え、新たな旅を決意する。
サブプロットの活用
サブプロット(副筋)を活用することで、物語に奥行きを持たせることができます。例えば、『鬼滅の刃』では、
- 炭治郎の成長物語
- 仲間との絆
- 鬼舞辻無惨との因縁
といったサブプロットが、メインプロットを補完しています。また、サブプロットは登場人物の心情や物語のテーマを強化し、読者に深い感動を与える要素となります。
7ポイントストーリーストラクチャーを用いたプロット案
テーマ: 環境問題
舞台: 汚染が進み、人類が存亡の危機にある未来世界。
主人公: 環境問題に関心が薄い高校生。
構成
- フック: 環境問題に無関心な日々。
- プロットターン1: 大規模な自然災害に直面。
- ピンチポイント1: 環境悪化を隠蔽する組織の存在。
- ミッドポイント: 環境を守るために行動を決意。
- ピンチポイント2: 組織の妨害により仲間が犠牲に。
- プロットターン2: 組織の弱点を発見。
- 解決: 組織を打倒し、新たな未来へ。
まとめ
7ポイントストーリーストラクチャーは、物語の緩急をつけ、読者の興味を引き続けるための有効なフレームワークです。
本稿では、その概要と具体例を紹介し、実践的なプロット構成案を提案しました。
また、物語の魅力を引き立てるために、キャラクターの成長や対立構造の深掘り、サブプロットの活用が重要であることも触れました。
この手法を活用すれば、ジャンルを問わず、読者を引き込むストーリーを作ることができるでしょう。