WEBマンガは紙媒体と異なり、縦読み、動きのあるコマ、音付きなどデジタルならではの表現技法で読者を魅了します!
近年、WEBマンガの人気が高まっています。本稿では、WEBマンガの独自の表現技法について解説し、その進化と可能性を探ります。
なぜWEBマンガは紙媒体マンガとは違う表現技法を使うのか?

WEBマンガと紙媒体マンガの表現技法には、媒体の違い、読者の目線の動き、表現技法の違いがあります。
まず、WEBマンガはデジタルデバイスでの閲覧に最適化されているため、紙媒体マンガでは不可能な表現が可能になります。
例えば、フルカラーの作品も珍しくありません。 また、デジタルならではの表現として、動きのあるコマや音付きマンガなども登場しています。
次に、読者の目線の動きが異なります。紙媒体マンガはページをめくりながら読み進めますが、WEBマンガは縦スクロールで読み進めることが一般的です。
紙媒体マンガでは見開きページを意識したコマ割りや構図が重要ですが、WEBマンガでは縦スクロールに合わせて読者の視線を誘導するようなコマ割りが求められます。
加えて、紙媒体マンガ特有の表現技法として「メクリ」と「ヒキ」があります。
「メクリ」とは、ページをめくる際に読者に驚きや期待感を与えるための技法です。
一方、「ヒキ」は、ページをめくる前の最後のコマに読者の興味を引くような要素を配置することで、物語に引き込む効果を狙うものです。
これらの技法は、紙媒体マンガにおいて、読者の視線と感情をコントロールし、物語への没入感を高めるために重要な役割を果たしてきました。
コマ割り表現と見開きの歴史
日本のマンガにおけるコマ割り表現と見開きの概念は、長い歴史の中で発展してきました。
見開きとは、本を開いたときに左右のページにまたがる画面構成のことで、日本のマンガでは、この見開きをひとつの単位として、コマ割り表現と構図を工夫することで、静止画であるマンガに動きと奥行きを与える独自の表現技法が発達してきました。
初期のマンガでは、コマ割りは比較的単純で、見開きの概念も明確ではありませんでした。
しかし、時代とともにコマ割りは複雑化し、見開きを意識したダイナミックな構図や、読者の視線を誘導するようなコマの配置などが用いられるようになりました。
WEBマンガの独自の表現技法を紹介!

縦読み
WEBマンガの最も特徴的な表現技法の一つが縦読みです。
これは、スマートフォンやタブレットなどの縦長の画面に最適化された形式で、読者は画面をスクロールしながらマンガを読み進めることができます。
縦読み形式は、韓国で生まれたウェブトゥーンと呼ばれるWEBマンガで広く採用され、日本でも近年普及が進んでいます。
縦読み形式には、大きく分けて3つの種類があります。 1つ目は1ページタイプで、従来のマンガのように1ページごとに区切られた形式です。
2つ目は2~4コマタイプで、縦長の画面に2~4コマを配置した形式です。3つ目は分離タイプで、コマとコマの間に空白を設け、各コマを独立させた形式です。
これらのうち、縦読みマンガとして最も適しているのは分離タイプです。
分離タイプでは、コマとコマの間に空白を設けることで、読者の視線が自然と次のコマへと誘導され、スクロールしながら読み進めるという動作にリズムが生まれます。
また、各コマを独立させることで、1コマごとのインパクトを高め、読者の印象に残りやすくする効果もあります。
縦読みと心理描写
縦スクロール形式は、読者の心理描写にも影響を与えます。
分離タイプの縦読みマンガでは、キャラクターの感情や心情の変化を、コマごとに順を追って表現することができます。
読者は、スクロールしながらキャラクターの表情やセリフを読み進めることで、より深く感情移入しやすくなるのです。
アドゴマ
WEBマンガ、特に縦読み形式において重要な要素となるのが「アドゴマ」です。
アドゴマとは、広告などでよく見られる、読者の興味を引くためのコマのことです。
縦読みマンガでは、読者は常にスクロール操作を行うため、一瞬で目を引くようなインパクトのあるコマが必要です。
アドゴマは、読者の視線を捉え、物語に引き込むための重要な役割を果たします。
動きのあるコマ
WEBマンガでは、デジタル技術を駆使した動きのあるコマの表現も用いられています。
紙媒体マンガでは静止画でしか表現できなかったものが、WEBマンガでは動画のように動かすことができます。
動きのあるコマは、様々な方法で表現されます。
例えば、コマとコマの間をアニメーションで繋いだり、コマの中に微妙な動きを加えたり、読者のタッチ操作に反応して動くインタラクティブな要素を組み込んだりといったことが可能です。
パズルつなぎ
コマの中の絵を動かす技法として、「パズルつなぎ」というものがあります。
これは、コマの前後の要素を重複させつつ、要素を足し引きする方法です。
例えば、前のコマに描かれた人物が次のコマでは少しだけ移動しているように見せる場合、人物の一部を重複させながら、背景や他の要素を変化させることで、動いているような錯覚を生み出すことができます。
集中線とスピード線
読者の視線を特定の場所に誘導するために、集中線やスピード線などの効果線を用いることも一般的です。
集中線は、一点に視線を集める効果があり、キャラクターの表情や重要な物体に読者の注意を向けさせたいときに使用します。
スピード線は、物の動きや速度を表現する効果があり、キャラクターの動作や背景の動きを強調したいときに使用します。
これらの効果線は、紙媒体マンガでも使用されますが、WEBマンガではデジタルツールによってより簡単に、そして効果的に表現することができます。
音付きマンガ
近年注目されているのが、音付きマンガです。
これは、マンガに音声(セリフ、効果音、BGMなど)を追加したもので、ボイスコミックとも呼ばれます。
音声を追加することで、キャラクターに命が吹き込まれ、物語への没入感が高まります。
音付きマンガでは、音声によってキャラクターの感情表現を豊かにしたり、効果音やBGMによって臨場感を高めたりすることができます。
例えば、登場人物の心情に合わせてBGMの雰囲気を変えたり、効果音で場面転換を強調したりすることで、読者の感情に訴えかける演出が可能です。
オノマトペと視覚的メタファー
WEBマンガでは、紙媒体マンガと同様に、オノマトペや視覚的メタファーが効果的に用いられています。
オノマトペは、擬音語や擬態語のことで、「ドーン」や「キラキラ」など、音や動作を文字で表現することで、読者に臨場感やイメージを伝えます。
視覚的メタファーは、比喩表現を視覚的に表現したもので、例えば、怒っているキャラクターの頭に雷マークを描いたり、恥ずかしがっているキャラクターの頬に斜線を描いたりすることで、感情や状況を分かりやすく表現します。
WEBマンガプラットフォームにおける表現技法

WEBマンガプラットフォームでは、それぞれのサイトの特性に合わせて、様々な表現技法が用いられています。
例えば、縦スクロールに最適化されたコマ割りや、フルカラーの作品が多いなど、スマートフォンでの閲覧に適した形式が採用されています。
WEBマンガプラットフォームでは、作品の世界観を拡張するようなコンテンツも提供されています。
例えば、キャラクターの設定資料や、作品の裏話などを掲載することで、読者の興味関心を高め、作品への愛着を深めるような工夫が凝らされています。
WEBマンガ作家・評論家の視点
WEBマンガプラットフォームの多様なコンテンツ展開は、作家や評論家にも影響を与えています。
彼らは、WEBマンガの表現技法について、様々な意見や考えを持っています。
WEBマンガでは読者の視線を誘導することが重要であり、コマ割りや構図を工夫する必要があるという意見や、デジタルツールを駆使することで、紙媒体マンガでは表現できなかったことが可能になるという意見などがあります。
また、WEBマンガは紙媒体マンガに比べて、読者からのフィードバックを得やすいという特徴があります。 読者のコメントや反応を参考にしながら作品を制作することで、読者のニーズに応じた作品作りが可能になります。
WEBマンガの表現技法の歴史と変遷
WEBマンガの表現技法は、紙媒体マンガの表現技法をベースに、デジタル技術の発展とともに進化してきました。
初期のWEBマンガでは、紙媒体マンガをそのままデジタル化したものも多く見られましたが、徐々に縦読みや動きのあるコマなど、WEBマンガ独自の表現技法が開発されてきました。
日本のマンガの歴史を遡ると、奈良時代から室町時代にかけて制作された絵巻物に行き着きます。
絵巻物は、横に長い巻物に絵と文章で物語を描いたもので、右から左へと展開していきます。この絵巻物の形式は、現代のWEBマンガにおける縦読み形式に通じるものがあります。
WEBマンガの縦読み形式は、絵巻物のように、読者の視線を縦方向に誘導することで、物語の世界に没頭させる効果があります。
最新のWEBマンガのトレンド
最新のWEBマンガのトレンドとしては、以下の点が挙げられます。
Trend | Description | 『Example |
---|---|---|
フルカラー化 | 従来の白黒マンガに加え、フルカラーの作品が増加 | 『ナルト』 |
縦スクロール形式の普及 | スマートフォンでの読みやすさを重視した縦スクロール形式が主流 | 『俺だけレベルアップな件』 |
異世界転生ものが人気 | 異世界転生ものをはじめとするファンタジー作品が人気 | 『オーバーロード』 |
多様なジャンルの登場 | 恋愛、ミステリー、ホラー、アクションなど、様々なジャンルの作品が制作 | 『SPY×FAMILY』 |
音声付きマンガの登場 | ボイスコミックと呼ばれる音声付きマンガが登場 | 『声優かっ!』 |
まとめ
WEBマンガは、紙媒体マンガの表現技法を踏襲しつつ、デジタル技術の進化とともに、縦読みや動きのあるコマ、音付きマンガといった独自の表現技法を発展させてきました。
これらの技法により、読者は新しい読書体験を得ることができ、物語への没入感を高めることができます。WEBマンガの表現技法は、今後も進化を続け、読者を魅了していくことでしょう。
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参考リンク
メディニュー: https://www.medinew.jp/articles/promotion/design/comic