「好きなキャラクターに、こんなセリフを言わせてみたい」「もしもあの場面で別の選択をしていたら……」——そんな想像から始まるのが、二次創作小説の魅力です。
読者として楽しむだけでなく、創作側に回って物語を紡ぐことで、原作への理解や愛着がさらに深まる体験ができます。
しかし、いざ「書いてみよう」と思っても、何から始めていいのかわからないという方も多いでしょう。
ストーリーの組み立て方やキャラクターの動かし方、文章表現のコツなど、初心者にとっての壁は少なくありません。
本記事では、初心者でも安心してスタートできる二次創作小説の書き方を、テーマごとにわかりやすく解説します。
設定づくりからプロット構成、地の文の工夫に至るまで、実践的なポイントを押さえているので、これから創作を始めたい方や、途中で筆が止まってしまった方にも役立つ内容になっています。
初心者でもできる二次創作小説の書き方

二次創作とは何か?
二次創作とは、既存の物語(アニメ、漫画、小説、ゲームなど)に登場するキャラクターや世界観を元に、自分なりのストーリーを展開させる創作活動のことです。
いわば「ファンによるファンのための創作」であり、原作への愛情をかたちにする手段のひとつです。
原作に忠実な再構成を行う人もいれば、まったく別の設定(パロディやパラレルワールド)をベースに創作を楽しむ人もいます。
自由度の高さと、原作キャラを通じて自分の世界観を表現できる点が、二次創作の大きな魅力です。
人気のジャンルとテーマ
二次創作の世界では、ジャンルやテーマのバリエーションも豊富
- 学園パロディ:原作キャラを現代の学校生活に当てはめる設定。友情、青春、恋愛が描きやすく、初心者にも人気。
- 現代AU(オルタナティブユニバース):現代社会を舞台に、原作とは異なる環境でキャラを動かす手法。設定自由度が高い。
- バトル要素の強化版:原作の戦闘シーンをさらに深堀りしたり、オリジナルの敵キャラを登場させてストーリーに厚みを加える。
- 日常系ストーリー:シリアスな原作に対して、キャラたちの何気ない日常を描くことで、癒しやギャップ萌えを狙える。
また、「if設定」や「原作で語られなかった裏話」「カップリング要素を掘り下げる」といったテーマも読者の関心を集めやすいです。
原作に忠実でありながらも、新たな視点を提供することが、魅力的な二次創作への第一歩です。
初心者向けのアドバイス
創作に不慣れなうちは、以下のポイントを意識することで無理なく進めることができます。
1. 完璧を目指さない
最初の一作目から名作を書こうとすると、プレッシャーに押しつぶされてしまいます。まずは完結を目指すことが何より大切です。短編やエピソード単位の作品から始めて、創作のリズムに慣れるようにしましょう。
2. 原作の魅力を尊重する
読者は原作のキャラが好きで二次創作を読みに来ています。だからこそ、性格や言動が原作とかけ離れてしまうと、違和感を覚えられることも。
キャラの「らしさ」を守りつつ、オリジナリティを加えるバランス感覚が大切です。
3. とにかく楽しむ
上手に書くことよりも、「書いて楽しい」と感じることを最優先にしてください。創作に夢中になれる感覚こそが、継続のカギになります。
プロットの作り方
プロットの基本要素
物語にまとまりを持たせるためには、あらかじめ大まかな流れ(プロット)を作っておくことが有効です。
基本構成をベースに、登場人物の行動や物語の展開を設計してみましょう
- 導入(起):キャラや舞台の紹介。物語の出発点となる状況を描く。
- 展開(承):問題が発生し、キャラが動き出す。人間関係や葛藤が見え始める。
- 転換(転):クライマックスへ向けた大きな事件や感情の爆発。ストーリーの山場。
- 結末(結):問題の解決、または余韻を持たせたラストで物語を締めくくる。
起承転結の重要性
特に初心者にとっては、「起承転結」という4つの柱を意識するだけで、作品がぐっと読みやすくなります。
二次創作は原作を知っている前提で読み進められるため、ストーリーの展開に「オリジナルなひねり」を加えるのがポイントです。
例えば、原作では描かれなかった選択肢をキャラに選ばせてみることで、意外性のある展開にできます。
ただし、その展開がキャラの性格から逸脱していないよう、「なぜそうしたか」の動機づけも描写すると説得力が増します。
物語を構成するヒント
- 「もしも」の発想から始める:たとえば「もしAがBと出会わなかったら?」「もしCが敵側だったら?」といった思考から、新しい物語が生まれます。
- キャラの行動に理由を持たせる:キャラが何を感じ、なぜそう動いたかをきちんと描くと、物語の筋が通りやすくなります。
- テーマを一つに絞る:短編なら特に「何を伝えたい話か?」を明確にすると、ブレのない作品になります。
キャラクター設定のコツ

魅力的なキャラクターの特徴
二次創作では原作キャラをそのまま使う場合が多いです。
そのキャラが持つ「本質」を捉え直すことが大切です
- 話し方や口癖:言葉遣いひとつでキャラの個性が伝わります。セリフは原作をよく観察して真似してみるのがおすすめ。
- 感情の動き:嬉しい、悲しい、怒るなどの場面で、どう反応するか。原作に基づいたリアクションを丁寧に描くことで説得力が出ます。
- 隠された一面の描写:表には出ていないけれど、内面ではこう感じているかも……という“想像”が、二次創作の醍醐味でもあります。
キャラクター関係の構築
人間関係の変化や緊張感は、読者を物語に引き込む大きな要素です。例えば、対立していたキャラ同士が理解し合う過程や、信頼が崩れて再構築される流れなど、関係性に動きがあると読み応えが増します。
オリジナルキャラを登場させる場合は、原作キャラとの接点や違和感のない登場理由を考えることが重要です。
成長するキャラクターの描写
物語を通してキャラが成長していくと、読後感がグッと上がります。たとえば、最初は自信がなかったキャラが仲間との関係を通じて前向きになっていく、というような変化を描くと感動につながります。
- 成長を感じさせる伏線を散りばめる
- 対比で変化を印象づける
- 読者に「応援したくなる」要素を与える
地の文の表現方法
描写の重要性とテクニック
小説において「地の文」は、キャラクターの内面や状況の背景、雰囲気を描く重要なパートです。
二次創作であっても、地の文の工夫次第で物語の深みが大きく変わります。
- 五感を使って描く
風の音、匂い、温度、空気の重たさ。読者が場面に入り込めるように、視覚だけでなく聴覚・触覚・嗅覚・味覚まで意識しましょう。 - 比喩を活用する
たとえば「胸が高鳴る」を「太鼓が鳴り響くように心臓が打った」と表現すれば、印象が深まります。ただし、過度な比喩や難解な表現は避け、読みやすさも重視しましょう。 - 感情と風景をリンクさせる
登場人物が悲しんでいる時に、雨の描写を入れるなど、環境描写と心情描写を合わせると自然です。
視点の選び方
小説には主に「一人称視点」と「三人称視点」があります。
それぞれの特徴
- 一人称視点:「私」や「俺」など、キャラの主観を通じて描写するスタイル。感情移入しやすい反面、情報の幅は狭くなります。
- 三人称視点(限定的):キャラの外側から物語を語りつつも、特定キャラの内面に寄り添える柔軟な方法です。初心者にはこの視点がおすすめ。
- 神視点(全知全能):物語全体を見渡し、すべての情報を語る視点。ただし扱いが難しく、地の文が説明的になりがちです。
自分の書きたい雰囲気やキャラの描き方に合わせて視点を選びましょう。
会話文とセリフの使い方
セリフはキャラクターの性格や人間関係を直接的に伝える強力な手段です。
自然でキャラらしいセリフを意識すると、物語の臨場感が高まります
- キャラごとの語尾や言い回しを再現すると、読者の「このキャラっぽい!」という満足感につながります。
- 説明的すぎるセリフや、冗長な会話は避けましょう。読者に考える余白を残すことで、想像力を刺激します。
- 地の文とセリフのリズム感を整えることで、読みやすさが格段にアップします。
短編小説の執筆ポイント

短編の構成とアイデア
短編小説は、短い中で完結させる構成力が求められます。まずはひとつのテーマや出来事に集中することがポイントです。
- 「キャラAとキャラBの喧嘩」
- 「原作の空白期間に起きた一夜の出来事」
- 「もしもあの場面で違う選択をしていたら?」
こうしたシンプルな切り口が、短編では特に有効です。
メモでストックを作る
日常の中で思いついたセリフや展開、シーンのアイデアは、すぐにメモしておきましょう。
- スマホのメモアプリやノートを活用
- ふとした会話や読書、映画から得たインスピレーションも記録
- 「使えるアイデア帳」として定期的に見返すと、創作意欲を高めてくれます
短編をスムーズに完結させる方法
- オチや結末を先に決めてから書く
- 書く前に「起承転結」または「三幕構成」をざっくり設計
- 文字数の目安を設定する(例:3,000〜5,000字)と、ダラダラせず締めやすい
長編小説の挑戦
長編のプロット作成
長編になると、ストーリーが複雑になるため事前のプロット設計が必須です
- 章ごとのあらすじを作成
- メインストーリー+サブプロット(恋愛、ライバル、葛藤など)を並行して描くと奥行きが生まれる
- キャラの成長過程を各章に散らしておくと、読者の期待感を持続させられる
時間軸の管理
長編では時間の流れを見失いやすいため、タイムラインを作るのが効果的です。
- 事件の発生順、キャラの移動、成長、季節の変化などを一覧にまとめておく
- 章ごとに「現在・過去・未来」のどこを描いているのかを意識
読者にとっても、時系列が自然に感じられる構成が望ましいです。
長編特有のキャラクター描写
長編ではキャラクターの掘り下げがしやすくなります。
- キャラの過去やトラウマ、夢や目標を丁寧に描くと物語に深みが増す
- 複数のキャラ視点を使うことで、それぞれの立場や感情の違いが鮮明になる
- 一貫性のある性格変化や成長を見せると、長編の読後感が格段に良くなる
推敲と評価の重要性
完成した作品の見直し方法
書き終えた直後は満足していても、時間を置いて読むことで思わぬ粗が見つかります。
- 最低でも一晩寝かせてから見直す
- 読点や句読点、言い回しのかぶりに注意
- 声に出して読むとリズムの悪さや違和感に気づきやすい
他者からのフィードバック
他人の目線は、自分では気づけない視点を提供してくれます。
- SNSや投稿サイトで感想をもらえる環境を活用
- 信頼できる創作仲間に読んでもらう
- 指摘があっても落ち込まず、今後の糧にする意識を持つ
作品を公開する際の注意点
- 原作の公式ガイドラインやファン活動ポリシーを確認する
- 年齢制限が必要な表現には注意書きを入れる
- タイトルやタグ付けで読者にわかりやすく作品内容を伝える
二次創作特有のルール

原作へのリスペクト
二次創作は「原作あってこそ」の創作です。原作の世界観やキャラクターを大切に扱う姿勢が、読者からの信頼や共感につながります。
- キャラクターの魅力を損なわない
- 世界設定を無理にねじ曲げない
- 原作の「なぜその行動をするのか」という核を理解する
NG行動を避けるためのヒント
- 商用利用や販売は禁止されているケースが多いため要注意
- 他の二次創作作品の盗作や設定の丸写しは厳禁
- 誤解を招く表現(公式と誤認されるタイトルや表紙など)も避けましょう
創作活動の自由を守るためにも、ルールを知り守る姿勢が大切です。
ファンとの関係を築く
二次創作では、読者とのつながりや感想のやり取りも創作の醍醐味です。
- コメントをくれた読者には丁寧に返信する
- 同じジャンルの創作者同士で交流するとモチベーションもアップ
- SNSや創作サイトで定期的に発信することで読者との距離が縮まる
まとめ:自分だけの物語を楽しもう
二次創作小説は、原作への「好き」という気持ちを文章という形に変えて表現する最高の手段です。
初心者であっても、設定・プロット・地の文のコツを押さえておけば、誰でも物語を紡ぐ楽しさを味わうことができます。
大切なのは、「読まれるかどうか」ではなく、「自分が書きたいものを、心を込めて書くこと」。この記事を参考に、ぜひあなたも創作の第一歩を踏み出してみてください。