かつて「韓国発の国際メッセンジャー」として世界で人気を博したLINEが、いまや完全に日本主導の体制へと移行しつつあります。
2023年末に発生した大規模な情報漏洩事件をきっかけに、日本政府の強い行政指導が入り、韓国・NAVERとの技術的・運用的な連携体制は見直され、日本主導の管理体制へと再構築が進められました。
この記事では、LINEの“脱・韓国化”が進んだ背景とその影響、さらに今後のNAVERやLINEヤフーの展望までを、調査に基づいて詳しく解説します。
LINEの個人情報流出事件がもたらした激変

2023年11月、LINEは日本国内において情報管理体制の課題が露呈し、個人情報の漏洩が確認されました。
この事件をきっかけに、日本政府はLINEを運営する「LINEヤフー」に対し、運営体制・技術基盤・データ管理の見直しを強く指導。
特に韓国の親会社であるNAVERとのシステム連携に対して、厳しい分離要求が出されました。
技術的・組織的な“完全分離”へ
✔ 主要システムの再構築
- NAVERクラウドとの接続を遮断
- アカウント認証、データセンター、セキュリティ監視をすべて日本主導へ
- 日本企業による24時間体制のセキュリティ監視センターを設置
LINEヤフーが日本の総務省に提出した報告書には、「完全分離」「不要な通信の遮断」といった表現が明記されており、両国の技術的な結びつきを完全に解消する姿勢が示されています。
✔ LINE Plusとの関係解消
韓国に本社を置く開発子会社「LINE Plus」との協業も終了。これにより、約2,500名規模の韓国側エンジニアの関与は段階的に縮小され、LINEの運営体制は日本国内主導へと移行しました。
経営構造と株式保有の現状
LINEヤフーの経営母体である「Aホールディングス」は、NAVERとソフトバンクが50%ずつ出資。AホールディングスはLINEヤフー株式の64.5%を保有しています。
表面上は共同支配に見えるものの、実質的な運営主導権は日本側が握っており、現在、NAVERの経営関与は限定的となっており、運営判断の多くは日本側によって行われています。
NAVERは「すぐに株式を手放す予定はない」としながらも、将来的には資本構造の見直しも選択肢にあるとコメントしています。
NAVERの業績と株価への影響
LINEとの関係見直しを受けて、NAVERの海外事業戦略は大きな転換期を迎えています。
報道によれば、2023年以降はプラットフォーム規制や情報管理の問題が複合的に影響し、株式市場での動きにも注目が集まっています。
また、NAVERは株主価値の向上を目的として、数千億ウォン規模の自社株買い・消却計画を公表したとされています(出典元:koreajoongangdaily)。
5. 今後のNAVER:LINE後の新戦略
LINEを失ったNAVERは、AI・コンテンツ・コマース事業を中心に新たな成長戦略を展開しています。
- NAVERクラウド事業の拡大
- グローバル進出を加速するWebtoon(ネイバーウェブトゥーン)
- 生成AI「ハイパークローバX」への巨額投資
NAVERは“ポストLINE”の柱を育てるべく、技術とグローバルIPコンテンツに集中投資しています。
日本におけるLINEの現在地と課題
日本では現在もLINEがメッセンジャーシェアNo.1を誇っており、ニュース配信や決済、行政手続きなどに広く活用されています。
しかし、近年の情報漏洩や日本政府の調査、そして韓国企業との関係遮断という事実が明るみに出たことで、一部ユーザーからは、情報管理体制の強化や透明性に対する関心が高まっています。
今後は以下が重要な課題
- 信頼回復のための透明性向上
- 安定したセキュリティ運用の継続
- 日本市場に最適化されたUXの追求
LINE Payの終了とPayPayへの移行
2025年4月をもって、LINEヤフーは日本国内でのLINE Payの提供を終了し、PayPayへの統合を進めると発表しました。
これにより、ユーザーはPayPayへの移行を促されることになり、ソフトバンクグループ内での決済統合が進められています。
一方、台湾やタイなどのアジア地域では、引き続きLINE Payが利用可能となっており、日本国内のみが対象の措置です。
総務省のガイドライン強化とLINEヤフーの対応
2024年4月、日本の総務省は通信の秘密とサイバーセキュリティ確保に関する追加ガイドラインを発行。
LINEヤフーには、外部委託先の管理や進捗状況の定期公開など、さらに踏み込んだ対応が求められるようになりました。
LINEヤフーは、これに対応する形で日本国内でのセキュリティ体制強化、NAVERからの独立、透明性のある報告体制を強化しています。
まとめ:LINEは日本企業となったのか?
2025年現在、LINEは「韓国で生まれ、日本で再構築された」プラットフォームとなりました。
名目上はNAVERとの共同出資体制が残っているものの、運営・技術・セキュリティ、すべてにおいて日本主導で動いています。
LINEという大規模プラットフォームをめぐる運営体制の変化は、企業戦略の枠を超え、デジタルガバナンスの在り方について多くの関心を集める事例となっています。