インターネットは、子どもたちにとって学習や娯楽、コミュニケーションツールとして欠かせない存在となっています。しかし、その一方で、有害な情報やオンラインリスクに晒される危険性も孕んでいます。
近年、スマートフォンやタブレットの普及により、子どもたちがインターネットにアクセスする機会が増加し、低年齢化も進んでいます。
総務省の調査によると、2023年には、小学生の9割以上がインターネットを利用しており、そのうち約6割がスマートフォンを所有しているという結果が出ています。(参考:令和5年版 情報通信白書|総務省)
子どもたちをインターネットの危険から守るためには、ペアレンタルコントロールの活用が必須です。ペアレンタルコントロールとは、保護者が子どものインターネット利用を管理するためのツールや機能のこと。
本ガイドでは、ペアレンタルコントロールの基礎知識から、デバイス別の設定方法、家庭でのルール作りまで、初心者の方でも分かりやすく解説します。
ペアレンタルコントロールの基礎知識
ペアレンタルコントロールとは?
ペアレンタルコントロールとは、保護者が子どものインターネット利用を管理するためのツールや機能の総称です。具体的には、以下のような機能があります。
- 特定のウェブサイトへのアクセス制限
- アプリやゲームの利用時間制限
- 有害なコンテンツのフィルタリング
- オンラインでのやり取りの監視
- 位置情報の確認
- 利用状況のレポート
なぜペアレンタルコントロールが必要なの?
子どもたちがインターネットを利用する上で、ペアレンタルコントロールが必要な理由は、以下の点が挙げられます。
- 有害コンテンツからの保護: 暴力的なコンテンツ、性的なコンテンツ、差別的なコンテンツ、自殺や自傷行為を誘発するコンテンツ、違法薬物に関するコンテンツ、ギャンブル、出会い系サイトなど、子どもに悪影響を与える可能性のある情報へのアクセスを制限することができます。
- 長時間利用による健康への影響: 過度なインターネット利用は、視力低下、睡眠障害、運動不足、集中力低下、インターネット依存症などを引き起こす可能性があります。ペアレンタルコントロールで利用時間を制限することで、健康的な生活習慣を促すことができます。
- ネットいじめやトラブルの防止: インターネット上でのいじめや、個人情報の漏洩、悪意のある人物との接触( grooming と呼ばれる行為)などから子どもを守るために、ペアレンタルコントロールは有効な手段となります。
- 不適切な情報の発信の防止: 子どもが、個人情報やプライベートな写真などを不用意にインターネット上に公開してしまうことを防ぐことができます。
- 高額課金の防止: オンラインゲームなどで、子どもが高額な課金をしてしまうことを防ぐことができます。
近年、インターネット上の危険は増加しており、巧妙化しています。子どもたちは、これらの危険性を十分に理解していない場合があり、危険に巻き込まれてしまう可能性があります。
ペアレンタルコントロールは、子どもたちをこれらの危険から守るための重要なツールと言えるでしょう。
デバイス別ペアレンタルコントロール設定方法
スマートフォンとタブレット
iOS(iPhone/iPad)の「スクリーンタイム」
Apple製品には、「スクリーンタイム」という機能が標準搭載されています。スクリーンタイムでは、以下のような設定が可能です。
- 休止時間: 特定の時間帯にデバイスの利用を制限することができます。
- アプリ使用時間の制限: アプリごとに使用時間の上限を設定することができます。
- コンテンツとプライバシーの制限:
- コンテンツの制限: アプリのインストール、App内課金、年齢制限のあるコンテンツへのアクセスなどを制限することができます。
- プライバシー: 位置情報、連絡先、写真などへのアクセスを制限することができます。
- コミュニケーションの制限: 電話、FaceTime、メッセージなどの利用を制限することができます。
設定方法はこちらのApple公式ページを参考にしてください。 お子様用デバイスのスクリーンタイムを設定する - Apple サポート (日本)
Androidの「ファミリーリンク」
Googleが提供する「ファミリーリンク」は、Android端末で利用できるペアレンタルコントロールアプリです。ファミリーリンクでは、以下のような機能を利用できます。
- アプリの利用時間の管理: アプリごとに使用時間の上限を設定したり、利用可能な時間帯を設定したりすることができます。
- デバイスの使用時間の管理: 1日あたりのデバイスの使用時間の上限を設定することができます。
- コンテンツの制限:
- Google Play: アプリやゲームのダウンロード、購入を制限することができます。
- ウェブ: Google Chromeで安全検索を有効化したり、特定のウェブサイトへのアクセスを制限したりすることができます。
- YouTube: YouTubeアプリの利用を制限することができます。
- 位置情報の確認: お子様の現在地を確認することができます。
- アカウントの管理: お子様のGoogleアカウントの作成、管理を行うことができます。
設定方法はこちらのGoogle公式ページを参考にしてください。 ファミリー リンク - Google
パソコン(WindowsとMac)
Windowsの「ファミリー機能」
Microsoftアカウントでサインインしている場合は、「ファミリー機能」を利用することで、子どものアカウントを管理することができます。
- スクリーンタイム: デバイスの使用時間の上限を設定したり、利用可能な時間帯を設定したりすることができます。
- コンテンツの制限:
- アプリとゲーム: Microsoft Storeでのアプリやゲームの購入を制限したり、年齢制限のあるアプリやゲームの利用を制限したりすることができます。
- ウェブ閲覧: Microsoft Edgeで特定のウェブサイトへのアクセスを制限することができます。
- 支出の管理: お子様がお金を使う際に承認を必要とするように設定することができます。
- アクティビティのレポート: お子様のデバイス使用状況(使用したアプリやウェブサイトなど)を確認できます。
- 位置情報の共有(オプション):Family Safetyアプリを利用すると、家族全員の位置情報をリアルタイムで確認することができます。
Microsoft Family Safety の概要- Microsoft サポート
macOSの「スクリーンタイム」
macOSにもiOSと同様に「スクリーンタイム」機能が搭載されています。
- 休止時間: 特定の時間帯にデバイスの利用を制限することができます。
- アプリ使用時間の制限: アプリごとに使用時間の上限を設定することができます。
- コンテンツとプライバシーの制限:
- コンテンツの制限: アプリのダウンロード、年齢制限のあるコンテンツへのアクセスなどを制限することができます。
- プライバシー: 位置情報、連絡先、写真などへのアクセスを制限することができます。
- コミュニケーションの制限: 電話、FaceTime、メッセージなどの利用を制限することができます。
詳細な手順や追加の設定については、以下のApple公式サポートページをご参照ください。
ゲーム機と家庭用デバイス
家庭用ゲーム機
-
Nintendo Switch: 「みまもり設定」アプリでプレイ時間を制限したり、オンラインでのコミュニケーションを制限したり、ソフトの購入を制限したりすることができます。
-
PlayStation: 「ファミリー管理」でゲームの年齢制限や使用時間を設定したり、オンラインでのコミュニケーションを制限したり、ゲームやアイテムの購入を制限したりすることができます。
-
Xbox: 「ファミリー設定」でプレイ時間と購入制限を管理したり、オンラインでのコミュニケーションを制限したり、コンテンツのフィルタリングを設定したりすることができます。
家庭用スマートスピーカー
Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーにも、ペアレンタルコントロール機能が搭載されています。
-
Amazon Echo: Amazon Kids+を利用することで、子ども向けコンテンツへのアクセスを制限したり、利用時間を制限したり、スキルへのアクセスを制限したりすることができます。
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Google Home: ファミリーリンクと連携することで、YouTube MusicやGoogleアシスタントの利用を制限することができます。
家庭でのインターネットルール作り
ペアレンタルコントロールは、子どもをインターネットの危険から守るための有効な手段ですが、技術的な対策だけでは不十分です。家庭内でのルール作りも重要です。
例えば、以下のようなルールを設けることを検討しましょう。
- デバイスはリビングルームなど、家族の共有スペースでのみ使用する。
- 毎日の利用時間を制限する。
- 寝る1時間前からはデバイスを使用しない。
- 食事中はデバイスを使用しない。
- インターネットで見聞きしたことは、家族に共有する。
- 許可なく個人情報を入力しない。
- 知らない人とオンラインで会わない。
- オンラインゲームで課金する場合は、事前に保護者に相談する。
ポジティブな利用の促進
子どもたちがインターネットを安全に、そして有益に活用できるよう、ポジティブな利用を促進することも大切です。
- 教育的なアプリやウェブサイトを紹介する
- 読書や運動など、オフラインの活動も促す
- インターネットのメリット・デメリットについて話し合う
- 情報モラルやネットリテラシーを身につけるための教育を行う
- プログラミングやデジタルアートなど、創造的な活動にインターネットを活用する
注意点とトラブル時の対処法
制限を回避するリスク
子どもは、ペアレンタルコントロールの制限を回避しようと試みる場合があります。
VPNを利用したり、別のアカウントを作成したり、制限のかかっていないデバイスを使ったりする可能性もあるため、注意が必要です。
ペアレンタルコントロールの設定を定期的に見直したり、子どもとインターネットの利用について話し合ったりするなど、継続的なコミュニケーションを図ることが重要です。
有害コンテンツ閲覧が判明した場合
子どもが有害コンテンツを閲覧していたことが判明した場合は、冷静に対応することが重要です。なぜそのコンテンツを見たのか、どう思ったのかを聞き、インターネットの危険性について改めて話し合いましょう。必要に応じて、専門機関に相談することも検討してください。
トラブル事例と対処法
- ネットいじめ: 子どもがネットいじめの被害者または加害者になっている場合は、学校や相談機関に相談しましょう。
- 個人情報の漏洩: 子どもが個人情報を漏洩してしまった場合は、すぐに警察に相談しましょう。
- 出会い系サイトへのアクセス: 子どもが出会い系サイトにアクセスしていることが判明した場合は、インターネットの危険性について話し合い、アクセスを制限しましょう。
- 高額課金: 子どもが高額な課金をしてしまった場合は、各サービスのサポートに連絡し、返金について相談しましょう。
まとめ
ペアレンタルコントロールは、子どもをインターネットの危険から守るための有効なツールです。しかし、最も重要なのは親子間の対話と信頼関係です。
子どもとインターネットの利用について、日頃から積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが大切です。
本ガイドを参考に、ペアレンタルコントロールを活用し、子どもたちが安全にインターネットを利用できる環境を整えましょう。
参考情報
- インターネットの安全・安心ハンドブック - NISC
- 国民のためのサイバーセキュリティサイト - 総務省
- 子どもとインターネットに関する情報 - 文部科学省
- インターネットトラブル事例集 - 消費者庁
注記
本記事の情報は、2024年12月12日現在のものです。 法律やサービス内容などは変更される可能性がありますので、最新の情報は公式サイト等でご確認ください。